高橋俊之です。
リーダーシップ教育をやっていると当然、「なぜ誰もがリーダーシップを発揮できる必要があるのか?」という話を授業や研修で話します(当然、ここでいうリーダーシップとはリーダーだけのものでなく、みんなで寄ってたかって起こすものです)。
全員発揮のリーダーシップが必要な時代
「物事が複雑かつ多様で、変化が大きくスピードの速い時代に対応するには、全員発揮のリーダーシップが必要になる。だから、組織としても個人としても、リーダーシップを発揮できる状態にしておくことは不可欠である」というのがオーソドックスな説明です。
ただ、これだけだと「やらされ感」「仕方ない感」が強い感じが僕はします。リーダーシップは「自ら動き出す」はずのものなのに、なんか矛盾しているような。そこで僕は、次の二つの理由もよく挙げます。
リーダーシップ発揮でもっと仕事がエキサイティングに
一つは、リーダーシップを発揮できた方が「エキサイティング」だから、です。
昔、部活で、合唱コンクールで、学園祭で、そんなエキサイティングな瞬間がありませんでしたか? なんとしても果たしたい共通のゴールができて、みんなの気持ちがだんだん高まってきて、それぞれが自分の強みを発揮しだす。しかも互いに連動しながら動いている時は、とってもエキサイティングではなかったですか?
もし「そんな経験は残念ながらないなあ」という場合は、そういう様子を見た時のことを思い出してみてください。例えば2019年に日本で開催されたラグビーのワールドカップにおける日本代表チーム。アイルランド、スコットランドなどの強敵を破った時はもちろんのこと、それに向けて邁進している様子には、見ている方までエキサイティングに感じたのではないでしょうか。
学生を見ていても、これは感じます。特におもしろいのは、その方が大変なのに、エキサイティングさが楽しくてやってしまう、ということです。例えば立教経営では1年生の「論理思考とリーダーシップ」の授業の最後に、400人弱の受講生が84のチームを組んで、これまた400人近くの公募高校生に論理思考を教えます。学んだばかりのことを自分たちが作った教材で教えるのはかなり大変なのですが、ふだんは「論理思考なんてかったるい」とか言っている人ですら、リーダーシップを発揮しだします。それは「エキサイティング」だから、だと考えています。
リーダーシップを発揮すればもっと人から感謝される
もう一つの理由は、「ありがとう!をもらえる」からです。
やるべきこと、言われたことをやっている時には「アタリマエ」なので「ありがとう」などとはなかなか言ってもらえません。しかし、リーダーでもない人が、誰にも指示されていないのに的確に動いていると、「ありがとう!」とか「気が利くな!」とか言われます。
この「ありがとう!」は、実際に言われてみると、けっこう得した感があります。自分が役に立っているという実感もありますし、相手の笑顔にも「良かったな」という思いが高まります。上に書いた「高校生に論理思考を教える」プロジェクトでも、チーム内で「私が説明している時に雰囲気を盛り上げてくれてありがとう!」と言われたり、高校生から「論理思考に興味が持てました!ありがとうございます!」と言われたりして、学生達はとてもうれしそうにしています。そしてまた、難しくても挑戦してみよう、自分から動いてみよう、と思う原動力になっているようです。
リーダーシップの楽しさ・やりがいをもっと多くの人に
そんなふうに、全員発揮のリーダーシップには「エキサイティングになる」ことと「ありがとう!をもらえる」という良さがあります。僕自身も、そういう場や人を増やすのが楽しくてリーダーシップ教育をやっている、とも思います。
(文責:早稲田大学 グローバルエデュケーションセンター(GEC) リーダーシップ開発プログラム 副統括責任者 高橋俊之)