一体感のあるチームの作り方

一体感のあるチームの作り方:立教大学BL1運営チーム

早稲田大学、立教大学では2020年度前期の授業が終了し後期の準備作業に入っています。モメンタム・デザイン代表高橋俊之に後期の準備、特に運営チームの作り方について聞きました。
(インタビューおよび記事執筆: モメンタム・デザイン メディアディレクター 海老原一司) 

立教大学BL1運営チーム

海老原: 現在(8/16)大学は夏休み期間だと思いますが、すでに秋学期の準備がスタートしているそうですね? 教材開発などでしょうか?
高橋: そうですね、教材はもちろん準備するのですけど、それとともに大事なのが「人とチーム」の準備です。まずチーム作りからスタートして、教材開発はそれに続いてという感じです。

海老原: 大学の授業の準備で運営チームの作りが重要とは面白いですね。まず、前提として、どんな体制で運営しているのでしょうか?
高橋: 立教大学経営学部のBL1(論理思考とリーダーシップ)を例に説明しますね。BL1の受講者数は350名程度。合計12クラスでそれぞれ教員が1名とSAが2名、全体についての仕事をしている学生スタッフCA(コースアシスタント)が6名、事務スタッフが数名。他にも関わってくれている学生メンバーが数名いて、コースリーダーの自分を合わせると50名近くのチームになります。

運営チーム作りとは

海老原: なかなかの大所帯ですね。ここでいう「チーム作り」は、単に適切なメンバーを選定して集めることとは違うわけですよね。
高橋: 適切なメンバーを集めることも確かに大事で、そこだけで1回分のテーマになりえます。笑 でも、その後も大事で、ここで言うチーム作りとはその部分、チームが一体感を持って動いていけるようにする部分です。具体的には、1)目標共有、2)安心安全な場作り、3)各自の役割認識と準備の3つがあります。まずこれらを行うために10時間以上をかけています。それも一度にやると頭がパンクするので何回にも分けてやっています。

海老原: なぜチーム作りがそこまで時間をかけるほど重要なんでしょう?
高橋: まず、共通の目標が理解され、みんなに「やりがいがある!」と思われていれば、混乱なく高いエネルギーを持って動いていけます。次にチーム内について「ここでは安心して思い切りやれる」「何かあればみんな助けてくれる」と思えていればストレスや心配なく全力を出せますね。最後に、とりわけ自分がどういう役割を期待されているのか、そのために自分がどんな準備をすれば良いのか分かっていれば、適材適所でフルに力が発揮されます。もちろん現実はそんな簡単にうまく行かないんですが、この方向へのチーム作りをやっているかやっていないかでは、大きく結果が違うと思っています。
海老原: それは企業内のプロジェクトチーム発足時や、年度替わりでの部門内でも必要かも知れませんね。
高橋: その通りだと思います。

目標共有はどう行うか?

海老原: では目標共有はどのように行ったんですか?
高橋: 複数回、少しずつ違う狙いを持って行いました。まずSACA(学生アシスタント)たちと行ったキックオフ。ここで今年目指したいことを話しました。
海老原: 何か話し方で意識していることはあるんですか?
高橋: 「難しい」って強調します。笑 
海老原: 出鼻をくじく為じゃないですよね。笑
高橋: もちろん違います。笑 難しいことを期待された方がやる気が出るじゃないですか。名乗り出て選ばれて集まった最初なので、こんなことができたらスゴイのだけど、はっきり言って難しいよ。でも、きみらとならやれると思う、と言われると。

海老原: そういう人達が集まっているわけですね。その後は?
高橋: 今度は教員とのキックオフです。ここは学生達相手よりは冷静なトーンですが、やはり「こういうことを実現したいんです」という話をします。
海老原: 教員と学生スタッフは別々なんですね。
高橋: はい、でも一緒にもやります。別々にやる良さと一緒にやる良さとそれぞれあるんですよね。また今回の場合、BL1の教員と学生スタッフが一緒にやるだけじゃなく春学期に行われたBL0とBL2の運営陣と一緒にサマーキャンプというのを半日で行いました。BL2はBL1の後に2年生になって受講生が受ける科目です。

海老原: 目標共有の中でも、サマーキャンプの役割はキックオフとは違うんですね。
高橋: その通りです。サマーキャンプはBLP(ビジネス・リーダーシップ・プログラム)全体としての目的を果たすためにバトンを受け取って次に渡す、そんな全体の中での位置づけを感じとる意味を持っています。実際今年も、BL0からもBL2からもエールをもらって、目的意識も意欲も高まった感じがします。
海老原: 私も今年からBL1講師の一人として参加していましたが、今年はこれらを全部オンラインで行っていましたね。
高橋: そうですね。その結果、もどかしい部分もあったけれども、だからこそ忙しい兼任講師のみなさんも普段以上に集まれた気もします。

安心安全な場作り

海老原: 安心安全な場作りはどんな感じで行われたのですか?
高橋: 一つは先に話したキックオフやサマーキャンプが安心安全な場になるように行うことですね。例えば教員のキックオフでは、自己紹介にその人の人柄が出るようなことを入れておいたり、コースリーダーの自分ばかり話すのではなく、新しい先生方の質問に質問していただいて、経験者の先生方に答えていただくようにしました。それぞれの人柄や思いが分かった方が安心できる、みんなで作ったり助け合っている場の方が安心できる、という考え方です。
海老原: 教員向けはキックオフとサマーキャンプの2回ありましたが、そういえば具体的なカリキュラムの話はほとんどなかったですね。笑
高橋: そうですよねえ。笑 仕事の具体的な話をする前に、ぶっちゃけて話せる関係作りが必要だと思うんですね。

海老原: もっとそのために特化した場もあったんですか?
髙橋: ありました。それがもう一つのタイプで、SACAの中ではチームビルディングのためだけに3時間費やした日がありました。「嘘つき自己紹介」というアイスブレイクでお互いを知ることから始まり、続いて、もうそのまま「安心安全な場を作ってみよう」というワークをやり。この「安心安全な場づくりワーク」はこの春、早稲田での授業で始めたもので、立教のSACAたちにやってもらったのは、彼らが自分のBL1担当クラスで受講生達と安心安全な場づくりをする参考にもして欲しい、という想いもありました。
海老原: としさんとは社会人教育の時からご一緒していて、以前からそういう場作りを意識されている気はしますけど、最近さらにそれを重視されている感じもしますね。
高橋: そうだと思います。気持ちの良い場が作れると、仕事の成果も上がるし、個人も幸せ度が上がる、と実感することが増えているからでしょうね。

役割認識と準備

海老原: 最後は役割認識と準備、でしたね。役割といっても「SAって何?」とかに止まらず、その人の個性や強みを活かすといったことですか?
高橋: その通りです。ここはSACAたちとグループ面談をしながらすりあわせて行きます。具体的には彼らに「自分の強みって何だと思う?」「自クラスと、運営チーム全体ではどういう役割を果たしていこうと思う?」と聞いていきます。また、こちらがどういう狙いを持ってペアSAや先生と組み合わせたかとか、なぜ本人の希望とは違う役割をあえて割り当てたか、など話して行きます。
海老原: 先生との組みあわせ理由まで話しちゃうんですか。
高橋: 両者の良さを活かして欲しいですからね。
海老原: 論理思考の研修や夏休みの宿題も出ると聞きました。
高橋: そうですね。BL1は特に論理思考を扱うのでSAも可能な限りレベルアップしていて欲しいわけです。事前課題でその人の強いところ、課題をチェックしているので、それに応じたことを意識しながら宿題に取り組んでもらいます。もっとも宿題と言っても世の中から「これってよく考えてあるよね!」と思う事例を見つけてきてみんなで共有し合うという、けっこう楽しめちゃうものですけどね。
海老原: なるほど。それもみんなでワイワイやると安心安全な場づくりにつながりそうですね。
高橋: そう、それも狙いなんです。そうやって一体感と信頼関係を十分に高められていると、各自の力が良い感じで活かされてチームとして最大の成果が出せると思うのですね。