淑徳与野中学・高等学校インタビュー

生徒の15年後から考えた|淑徳与野中学・高等学校

モメンタム・デザイン代表高橋俊之が2013年から教育顧問として関わっている淑徳与野中学・高等学校の活動について伺いました。

高橋俊之の淑徳与野中学・高等学校サポートシリーズ全5回を予定しています。今回は第1回「生徒の15年後のための教育とは」です。

(インタビューおよび記事執筆: モメンタム・デザイン メディアディレクター 海老原一司

中高一貫女子校で求められた変化とは

海老原: これまでのインタビューでは早稲田大学や立教大学でのリーダーシップ教育の話を伺ってきました。大学教育とは別に、淑徳与野中学・高等学校で教育顧問をされているそうですね。淑徳与野は中高一貫の女子校。大学のリーダーシップ教育とはかなりかけ離れているようにも思えます。どんなことをおこなっているのでしょうか?
高橋: 学校を少しずつ変化させていくお手伝いです。早稲田、立教と違って僕の役割にプレイヤー要素はなくファシリテータです。

海老原: ファシリテータとして入られるきっかけは何だったんですか?
高橋: 大学入試改革でした。2013年当時、文部科学省から教育改革の議論として「生徒達の思考力・判断力・表現力を育てる」ことが大事だと言われ、大学入試がその方向に変わると言われていました。淑徳与野高校はほとんどが現役で4年制大学に進学する埼玉県でも有数の進学校なので、この教育改革の影響は当然大きく受けるわけですね。それまでは手厚い指導が高い進学率を支えていたのですが、さらに生徒たちの主体性を高めることが必要ではないか、という問題意識が学校内に生まれていました。

15年後、生徒にどうあってほしいか? 

海老原: 最初は何をおこなったのでしょう?
高橋: 先生向けのワークショップを行いました。「Teachers Workshop 生徒達と学校の未来を考える」というもので、管理職から若手まで15名程度の先生方に集まっていただき「今の生徒たちに15年後、どうあってほしいか」「そのために淑徳与野の教育はどうあるべきか」を話し合いました。

海老原: 高校生の15年後というと、30歳ちょっと。会社では仕事も任されてきて、結婚して子どもが生まれる人もいる、というくらいですね。
高橋: そうなんです。教育の成果は本来は長期的なものなので、その頃に社会や家庭において活き活きと過ごせる人を育てたい。それにはこれからどんな時代が来て、その時代に備えるためには今、どんな教育をする必要があるか、考えたかったのですね。

先生の情熱を引き出す質問「なんで先生になったか?」

海老原: 親としてはとても大事なことだと思いますが、先生方は日常のことでかなり忙しいですよね。議論は活発に行われましたか?
高橋: はい、だいぶ前のことですが、とても活発な議論が行われていたことをよく覚えています。

海老原: どうしてそうなったのでしょう?
高橋: 一つには、やはり前向きな先生が多い、ということがあると思います。一方、こちらでもちょっと工夫したことがありました。
海老原: それはなんですか?
高橋: ウォーミングアップを大事にしました。ワークショップの最初に自己紹介をしていただいたんですが、その中に「なんで先生になったのでしょう?」という内容を入れていただきました。これはその時にコラボをお願いした教育と探求社の宮地勘治さんの提案で行ったもので、彼によれば先生というのは先生になろうと思った熱い理由を持っている、というんですね。普段はお互いにそんな話をしないでしょうが、この機会にそれを出していただくと、日常から良い意味でいったん引けるし、きっと場の温度が上がる、と思ったんです。

海老原: それが効いたわけですね。
高橋: 効きました。最初は僕らが話して一人1分で、ということだったんですが、先生方は1分じゃ終わらなくなってしまって、結局1時間かかりました。

目指したいのは「たくましく生きる」

海老原: なるほど〜。そうやって盛り上がってスタートして、ワークショップの成果はどうなりましたか?
高橋: まず、みなさんが目指したいところが表に出て来ました。「たくましく生きる。自分で道を切り拓く。世の中の役に立ってほしい」といったところが共有されました。また現在おこなっていることの価値も見えて来ました。例えば勤勉に忍耐強く取り組む姿勢を培うこと、勉強だけでなく部活・委員会・行事に熱心に取り組むこと、国際社会に目を向けることなどですね。

海老原: 課題が見えて来た部分もありましたか?
高橋: そうですね。課題というよりこれからのテーマでしょうか。高い現役進学率を支えているのが手厚いサポート・指導なのですが、これには生徒たちを受け身の姿勢にさせかねないという側面もあります。しかし将来を考えると、中学・高校時代から主体性、挑戦する姿勢、失敗にめげないたくましさ、そして目標にたどり着くための考える力をもっと身につける教育に発展させて行く必要がある、と見えて来ました。

中高生からのキャリア教育

海老原: それからいろいろな展開がなされて来たんだと思いますが、例えばどんなことがありますか?
高橋: たくさんあると思いますが、自分自身が関わったものでいうと、まず「インパクト体験棚卸し」によるキャリア教育があります。いわば今の自分を作り上げた体験を振り返って、そこから強み、価値観、問題意識・ビジョンなどキャリア構築の材料を引き出すというワークです。かつこれをグループワークでお互いにおこなってもらいます。

海老原: 大学生対象にこれを行う授業は私も担当したことがありますが、それを中高生でやっているんですね。
高橋: はい、実は事前に予想していた以上に意味が大きかったです。人間というものについての認識が深まる、しっかり物事と向き合おうという気持ちが高まる、といった効果を感じました。
海老原: しかも中学・高校全体に展開していったんですね。スムーズな導入には、いろいろ工夫が必要だったのではないですか?
高橋: はい、特に最初は段階的な導入を意識しました。

自由研究から創作研究へ

海老原: そのあたり含めてインパクト体験棚卸し導入について、また詳しく別記事で聞かせてください。他にはどんなことを導入されましたか?
高橋: 一つはアクティブ・ラーニングの日常への導入ですかね。授業ではなくあえて部活や委員会の指導、ホームルームなどで行いました。
海老原: なるほど。生活そのものをアクティブ・ラーニングの場にしてしまおうという考え方ですね。
高橋: その通りです。その方が徐々に導入しやすいのと、学校外の生活でも生徒が考えたり行動する習慣につながると考えたからです。

海老原: もう一つ挙げるなら何ですか?
高橋: いわゆる自由研究のやり方をパワーアップしたことですかね。淑徳与野中学校では創作研究といって一年近くかけて取り組みます。しかし自由研究ってものすごく一生懸命取り組む子もいる反面、入れ込めるテーマを見つけられなくて、適当に済ませたり、親が手伝ってしまったり、これは我々もよく見るところですよね笑。
海老原: うちの子は大好きな方ですけど、普通はそうですよね。夏休みに一番頭が痛いという。親もあまり重視していなかったりしますね。
高橋: でも、本当は逆だと思うんです。全ての勉強は自由研究に活かすためにあるのではと。自由研究のテーマを常に見つけられるのが目指す状態だし、そうなっていればあらゆる教科が役立つことが実感できて勉強のモチベーションも上がるはず。そう考えて、創作研究(自由研究)を多くの子が楽しく、充実してやれる方策を先生方と考え、実施に持ちこみました。
海老原: 結果はどうだったんですか?
高橋: かなりおもしろいものが増えました。
海老原: そうなんですね。でも、今回は長くなったので、これもまたの機会に聞かせて下さい。