しばらく前に僕のFacebookウォール等でメンバー募集をしていた「リーダーシップwith論理思考勉強会」が、先週土曜日にスタートしました。下は新卒社会人〜上は50代まで、バックグラウンドも多様なメンバー構成で、とてもおもしろく感じています。
リーダーシップに必要な論理思考とは
そんな勉強会にどんな実践課題が持ちこまれるかについて、ある人に話していたら、「普通、論理思考でイメージする課題と違いますね」と言われました。普通とは、「売上が伸びていないが、どこに課題があるのか?」とか「離職率が高いのは何が問題なのか?」といった課題です。ロジックツリーなどを使って分解し、データを取って原因を究明したら、それを改善する策を取る、そんなふうに進みますが、これももちろん論理思考です。
これに対して僕らが扱っていたのは上のような問題との関係で言えば「いや、それが原因だと分かっているのになぜか解決に動けない。どうすれば動けるようになるんだろう?」というものでした。
技術的問題と適応課題
前者と後者の問題について、ハーバード・ケネディスクールのロナルド・A・ハイフェッツ氏はそれぞれ「技術的問題」と「適応課題」と呼んでいます。技術的問題は高度な専門知識や技術を駆使することで解決できますが、適応課題は人々の優先事項、信念、習慣などを変えなければ対処できません。
身近な例として、コロナ禍で増えてしまった体重に危機感を感じて始めた人も多そうなダイエットを使ってみます。バランスが良くてカロリーの少ない食事メニューと、脂肪燃焼に効果的な運動メニューを用意するのは技術的問題です。一方、テレワークで身についてしまった間食の習慣をいかにやめるかとか、やれば良いことは分かっているけどつい忙しさにかまけてやれずに一日が過ぎてしまう運動をどうやってできるようにするかというのは適応課題です。
適応課題について普通は「頑張るしかないっしょ」としてしまいがち、というのも前述の「論理思考でイメージする課題と違いますね」となる理由です。でも、ここで「人はどうなると動くのか?」を考えると、根性だけでは難しかったことが実行できる可能性が上がります。例えば誰かと一緒に運動すると少し「楽しさ」とか「強制力」が増しますし、SNSで自分の取り組み状況を発表することには「励み」と「プレッシャー」という似た効果がありそうです。週に1回くらい休みや好きなものを食べて良い日を入れることは「ハードルを下げる」効果があるかもしれません。
そして、このタイプの論理思考、つまり適応課題に使える論理思考は、リーダーシップにむちゃくちゃ役立ちます。リーダーシップとは人に影響を与えることですから、適応課題に直面することが多く、しかも難しい時ほどリーダーシップが必要になります。
なので、そこを考える力を上げようとやっているのが、今回の「リーダーシップwith論理思考勉強会」というわけです。多様なメンバーに参加してもらったのも、組織内外にいる多様な人たちの頭の中はどうなっているのかを情報交換しやすくするためです。
実際にどんな課題をどのように扱っているのかも、これから紹介していければと思っています。
(文責:早稲田大学グローバルエデュケーションセンター 高橋俊之)