モメンタム・デザイン代表高橋俊之に2020/6/24から開講した早稲田大学リーダーシップ開発(LDP)の「問題解決プロジェクト」についてTV会議インタビューしました。
(インタビューおよび記事執筆: モメンタム・デザイン メディアディレクター 海老原一司)
プレゼンはコーチングの姿勢で聞け?
海老原: 先週までリーダーシップ開発(理論とスキル)を開催されていました。今週からは連続して「問題解決プロジェクト」の授業が始まったそうですね。
まず、問題解決プロジェクトとは、どんな授業なのでしょうか。
高橋: 問題解決プロジェクトは、企業クライアントからテーマを出してもらい学生が実際に問題解決に取り組みます。今年のクライアントは、法人向けクラウドサービスで有名なセールスフォース社です。
春学期はリーダーシップの理論とスキルを学びました。しかし、やはりリーダーシップは実践で学ぶ要素が大きい。そのためプロジェクトベーストラーニング(PBL)を取り入れています。
海老原: 企業クライアントの課題を解決するPBLは立教大学でも行われていますね。早稲田大学で行うに当たって設計を変えたところはあるのでしょうか。
高橋: PBLの基本構造は変わりません。でも、早稲田生が最大の学びを得られるように、チューニングはしています。例えばこのスライドがそれです。クライアントからのプレゼンを聞く前に出したスライドです。
海老原: あれ?これって理論とスキルでチーム内コミュニケーションのポイントとして示していた図ですよね。コーチングから持ってきたという。
高橋: そうです。早稲田生は優秀さの副作用から自分で決めて一人でやってしまおうとしがちなんですが、もっと周りに耳を傾け、頼り、周りを活かすようになって欲しい、という話をしましたね。それと同じことが対クライアントでも言えると思ったんです。
海老原: どういうことですか?
高橋: いろいろな人から聞いたんですが、クライアントが参観に来てグループワークを覗き込んでも、早稲田生は自分たちの議論に没頭していて、クライアントに話しかけるとかしないそうなんです。
海老原: クライアントの生の声を聞く機会なのに?
高橋: そう、変ですよね。僕の仮説は、彼らは排他的とか悪気があってそうしているのではなく、独力で解決しなければならないと思い込んでいるんじゃないか、ということなんです。
海老原: なるほど。そこでクライアントのプレゼンを聞く時に、チーム内コミュニケーション(「承認」「傾聴」「質問」)のスライドを出したんですね。クライアントもチームの仲間にしちゃう感じですか?
高橋: その通りです。クライアントは答えをぶつける敵じゃなくて笑、仲間です。仲間が「こんなことをしたいんだ」と言って持ってきたのが「これからの働き方を実現するためにSalesforceができること」という課題です。その想いを受け止め、言外のメッセージも含めて聞き取り、一緒に何をしようかと質問をして欲しいわけです。
海老原: それで質問はたくさん出たんですか?
高橋: はい、良い質問がじゃんじゃん出ました。Salesforceの方もサービス精神旺盛で語ってくださったので時間が足りなくなってしまいましたが。笑
個人戦から団体戦へ
海老原: さっきの話を聞いていて、なんかちょっと、世界観まで変えようとしているような気がしたんですが。笑
高橋: そうかも。早稲田生大変身作戦です。前回も少し触れましたが、世の中で出会う相手は叩くべき敵や勝つべきライバルばかりじゃない、と思って欲しいなと。その優秀さをもって相手を支援して相手のやりたいことを実現したり、隠れた才能を持っている人をフルに活かしてあげたりする中で、結果として自分が「なくてはならない人」になることを目指す人達がでてきたらいいなあと思っています。
海老原: そういう人ってけっこういますか?
高橋: 具体的には分からないですけど、実はその素地を持っている人はけっこう多いんじゃないか、というのが受講生たちを見ていて感じるところではあります。
合同授業でお祭り感を作る
海老原: 他に初回の設計で意識したポイントって何ですか?
高橋: クラスを超えた一体感です。理論とスキルはずっと3クラスがそれぞれでやってきました。同じ時間に同じ内容をやっているけどオンラインだったこともあって他のクラスの存在を受講生が意識することはほとんどなかったでしょう。
しかし、今回は合同クラスにしました。
海老原: 合同にする狙いはなんですか?
高橋: 「お祭り感」でプロジェクトの初速を上げることです。Zoom上で普段の三倍の顔が画面に並ぶじゃないですか。表示される各自の名前の先頭にはいつもと違って先生の頭文字が入ってます。受講生もちょっと緊張気味の顔ですけど、それも含めてテンション上がっていいんです。
海老原: 対抗意識もあったりしますか?
高橋: 持ってもらいたいと思っていました。「自分たちが一番全体を盛り上げる」という。例えば3人のTAが入れ替わり立ち替わりMCを務めるんですが、「ちょっとチャットに書いてみて」とMCが言うと、あるクラスからばばっと書き込みが入ったりするんですよ。それをMCやってないTAがチャットに「○○先生クラスすごいな!」と書き込むと、今度は別のクラスから書き込みが入ったりね。
海老原: 中高生のときの運動会を思い出しました。応援団がいて、応援合戦がある。「うちは盛り上がっているぞ」「いや、うちのクラスの方がすごい」とか競争心があおられるわけですね。勝敗には全然関係ないんですけど笑
高橋: 確かに! 結局何をやっていたかというと、「仲間」とか「自分たち」というのを一段拡げながら盛り上がりを作っていた感じです。そこには、新たな仲間であるクライアントから持ちこまれた「課題」を解決するというワクワクがあって盛り上がる部分と、ライバルでもあるが同じ目的にも向かっている他クラスの仲間と競い合うことで盛り上がる部分がある。そんなふうになるように、と考えながら設計して、結果としてはなかなか良いスタートを切れたんじゃないかな、と感じています。