僕らはまた「マイノリティ性」をPBL課題の要件にする

僕らはまた「マイノリティ性」をPBL課題の要件にする

澤田智洋さんの書籍「マイノリティデザイン」に触発されて、21年度後期は「リーダーシップ開発:問題解決プロジェクト」の課題に明確に「マイノリティ性」を組み込みました。具体的には、

 「実現したら自分や周りの人が幸せになると思える、あなたのマイノリティを社会に生かせるプランをPSSJに提案してください」

というもの。(PSSJは提携企業パナソニックビジネスシステムソリューションズ様)

マイノリティ性をPBLの課題の要件にするのはちょっと珍しいと思いますが、やってみて狙い通り、というかそれ以上の意義を感じ、22年度前期も課題に組み込む予定です。

どんな意義があったかというと、次のようなものでした。

(ちょっとその前に1点注意点を上げると、マイノリティというと社会的弱者をイメージする人もいると思いますが、僕らは「標準外」と捉えています。例えば頭が良すぎて学校の授業がつまらなすぎると感じている子どももマイノリティです。かなり標準外なのに配慮されず結果的に社会的弱者になるケースも多いとは思いますが、「別に弱者ではないけど標準外なのでやりにくい」というケースも実は多くあると思います。学生の提案では例えば「メイクをしたい男性」といったマイノリティが取り上げられました。)

注意点が長くなりましたが意義です。

1. 何らかのマイノリティ(標準外)で悲しい/辛い状況にあることを解決する提案は社会におけるリーダーシップと言える。

2. 自分の「標準外」を自己開示する一方、他者の標準外を理解する努力をし続けることで、多様性についての理解が深まるとともに、多様なメンバーを含むチームやコミュニティを成功させるトレーニングになる。

3. 早稲田大学入学まで登ってくるために押し殺してきた自分の中の「標準外」を再発見する機会になるかもしれない。(自分にはマイノリティ面が見つからないという人がいるが、ないのではなく、見つけられないだけではないか?)

4. 物事の本質を考える機会になる。そのマイノリティ性の核は何なのか、それは克服するべきものなのか、ただのワガママとはどう違うのか等々。またそういう本質を考える力は実は、質の高い合意形成や目標共有に大きく寄与するのではないか。

5. 切実な課題かつジブンゴトがテーマになるので、短い期間でも質の高い提案を作り上げられる可能性が上がる。

一つ最後に付け加えると、これは大学の授業だけじゃなく、企業の研修や新規事業企画でも使えるのではないかと思っています。

(早稲田大学グローバルエデュケーションセンター 高橋俊之)