更新がすっかりご無沙汰になっていました。
仕事の中には日々おもしろいことがたくさんあるのですが、夜には力を使い果たしてしまっていて、なかなか書けずにいました。
お盆休みで少し余裕ができたので、今日は最近関わっている「おもしろ動画」制作の話を書いてみます。
プログラミングから「Wonder」へ
今年3月末に大学を離れて、新たに始めたことの一つが、妻の会社が運営している小中学生向けの学びの場「Wonder Labo」です。
この教室は、もともと「Wonder Laboプログラミング教室」という名前で、子ども達がプログラミングをきっかけにWonder(驚きや不思議)を楽しみ、生み出す体験を提供してきました。
しかし、近年はプログラミングを学べる場も増えてきたため、「もっといろいろなWonderを楽しみ、生み出せる教室にしたい」という妻の思いから、今年4月に「プログラミング教室」の冠を外し、「Wonder Labo」として再始動。僕もこのタイミングから関わるようになりました。
教室が目指すのは、「学ぶことを楽しみ、リーダーシップの発揮も楽しんでしまう人」を育てること。
ここでいう「学ぶ」とは、学校の勉強や受験対策に限らず、何かを知る、理解する、試行錯誤する、そしてその過程で考える力をはじめ、いろいろな力を高めていくことを指します。
その一つの手段として、今子どもたちが取り組んでいるのが――
「おもしろ動画」の制作
です。
まだ必要なスキルを身につけている段階ですが、年末くらいには観ていて思わず笑ってしまい、かつちょっと学びもある、生徒たち作のショート動画を公開できたらと思っています。
「おもしろ動画」ってどんなもの?
ここで言う「おもしろ動画」とは、人や自分自身を傷つけない範囲であれば、なんでもアリだと考えています。
ちなみに僕自身がおもしろく観ているのは、たとえばYouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」。
言語オタクと言語学素人の二人が、言語にまつわる話題を興味深く、かつ笑い満載で語る番組です。
たとえば「論理的に解けない難問「ガヴァガイ問題」を赤ちゃんは解く【赤ちゃんの言語習得2】」という回、タイトルは難しそうですが、冒頭の赤ちゃんに「本」という言葉を説明しようとするトライがまるで漫才のようで笑ってしまいます。実はそれが「赤ちゃんってみんな天才なんじゃないの?」と気づかせてくれる布石になっていて、その後に軽妙なやりとりで言語習得の仕組みが楽しく説明されていきます。
もちろん、子ども達にこのレベルを求めるわけではありません。
でも、自分が興味を持っているテーマ(たとえばポケモン?)を自分らしく「おもしろ化」してショート動画にすれば、けっこうおもしろい作品にできるんじゃないかなと思っています。
テーマ × おもしろ
の構造ですね。
なぜ「おもしろ動画」なのか?
しかしなぜ「おもしろ動画」なのか。
「動画」なのは、作品をいろいろな人に観てもらいやすく、作る子どもたちもそそられそう、ということなのですが、「おもしろ」を作ることを中核に据えたのは、この制作プロセスの中に、これからの時代に不可欠な要素がぎゅっと詰まっているからです。
1. 考える力が育つ
まずは「考える力」を養えることがあります。情報や知識はAIに聞けばいい、という時代になりつつありますが、的確な答えをAIに出してもらう聞き方や、AIが出して来た答えの適否の判断をはじめ、考える力はこれまで以上に必要になります。
一方、「おもしろ」コンテンツを作るには、本当の考える力が必要になります(天然でやれるごく少数の人は別かもしれませんが)。たとえば大喜利を観ていて、吹き出しちゃうような作品って、「そこまで飛んだか」というような、発想の飛躍がありますよね。この「飛躍がある」というのは一見、「思考」ではないように思えるかもしれませんが、実は囚われがちなことを「飛びこえるという思考」をしています。でも全然つながっていないわけではなく、「なぜそうなの?」という理屈を説明できるという点でも思考しています。
また、「おもしろい」「おかしい」の作り方はいろいろありますが、これを自分たちで見つけて行く中でもとても考えるので、考える力が養われます。これには生徒達に自分がおもしろいと思った動画を持って来てもらい、それをみんなで観ています。そしてみんながどっと笑った瞬間「なんで今、笑ったの?」と聞きます。
「おかしかったから」「変だったから」といった反応が最初は出て来がちですが、「どこが変だった?」「どう変だった?」と聞くと、みんなさらに考えてたとえば「普段のイメージがかけ離れていることをやっているから」「動きが遅いより速い方がおかしい感じになるかも」と「おもしろ」の作り方の解像度を上げて行ってくれます。
というように、単にぱっと思いついたおもしろいものを作るだけでなく、おもしろさが生まれる仕組みを言語化し、どうすればもっとおもしろくなるかを考え抜く。この思考の積み重ねが、生きた考える力を育むのでは、と考えています。
2. 楽しく取り組める
二つ目は、「楽しく取り組める」ことがあります。まず上に書いたように「おもしろ動画を観る」のが授業の一環ですから楽しいですよね。笑 それがどうしておもしろいのか?を試行錯誤しながら言語化していくのも、謎解きの楽しさがあるようで、子どもたちは楽しそうにやっています。
自分でおもしろいことを考えるのは、最初二つに分かれます。たとえば「こんなプールはイヤだ」とか「こんな看護師はイヤだ」とか考えてもらうと、いわゆる優等生タイプの子は「雨で寒い」(プール)とか「口調がキツイ」(看護師)といった、確かにイヤだけど現実的すぎておもしろくはないことしか出て来ません。そんな段階のうちは、彼らは戸惑った感じで「楽しい」まではなっていません。
でも、ここで「おもしろいことを考えるのが大好き」タイプが活躍して「流しそうめんが流れてるプール!」とか「ポケモンの○○(好きだけどごついヤツ)が看護師」とかズレたことを言い出すと、戸惑っていた子たちも「ああ、そういう感じか」とイメージをつかめて思いつけるようになり、みんな楽しくなってきます。
3. リーダーシップの武器になる
上の話を読んで「楽しそうだけど、遊びみたいなことばかり考えていて、将来につながるのかな?」と思った人もいるかもしれません。それについてはむしろ、あらゆることを遊びや楽しいことに仕立ててしまえると、それはリーダーシップの強力な武器になりうると考えています。
役に立つことや重要なことであっても、苦痛や手間が伴って、かつ楽しくないことについては人はなかなか動けません。いわゆる勉強はその最たる例ですね。しかしそこに楽しさが伴ってくると、やりだす人が増えてくるのと、あと「一応やりました」じゃなくて本気で取り組む人が増えてきます。
仕事やその他の社会的活動に、そういう「楽しくなる、おもしろく思える仕掛け」を組み込めると、リーダーシップにつながります。たとえば僕自身の体験ですが以前、町内会の会長になったばかりの時に、自己紹介とアイスブレイクをかねて「嘘つき自己紹介」というアクティビティを役員さんたちとやったことがありました。
自己紹介の中に一つ嘘を入れて、それを当ててもらうという簡単なゲームですが、笑いが起きて場が和んだり、普段よりも踏み込んだ自己開示(「実はこれが苦手で…」など)が生まれたりしていました。それが町内会の会合を「面倒だけど参加しないとならない仕事」から「まあちょっと楽しみかも」に変えたり、協力し合う空気の醸成につながったりしているかも、と思っています。
このようにミーティングやその他の仕事に「おもしろ!」を組み込めることは、人々の仕事に対する意識を前向きにします。ということは物事に「おもしろ!」を組み込む力を持っていることが、大きな強みになり得る、と思うのです。
これからの「おもしろ動画」計画
さて、Wonder Laboの「おもしろ動画づくり」、今はまだスキル習得の段階ですが、年末か年明け頃には子ども達が自力で「思わず笑ってしまうけれど、ちょっと学びもある」作品を発表できるように持っていきたいと思っています。大喜利、クイズ、写真を使ったユニークなうんちく紹介など、ネットマナーを守れば内容は自由。どんなWonderが生まれるのか、今から楽しみです。
そして、Wonder Laboの授業の設計やフィードバックは僕が担当していますが、実際に子どもたちと向き合うのはWonder Laboのスタッフたちです。
彼ら自身が楽しみながら成長している様子を見るのも、僕にとって重要な楽しみになっています。
というわけで最近は、子どもたちやスタッフに紹介して話題にできそうなおもしろ動画探し」が、すっかり日課になっています(笑)。
モメンタム・デザイン代表 高橋俊之(たかはし としゆき)