論理思考実践 -報告書がうまく書けないのは文章力の問題か

報告書がうまく書けないのは文章力の問題か|論理思考実践

継続型の論理思考研修では各自の課題を課題を持ち込んでもらいます。その日、ある受講生は「文章力を高めたい」という課題を持ち込みました。報告書を書いても、なんかまとまりのない感想になってしまうのだそうです。

餃子のレシピで文章力評価? -良い報告書を書くためのポイント

そこで、ちょっと文章を書いてもらうことにしました。本当は実際に書いた報告書を持ちこんでもらうとベストなのですが、その時はちょうど良いのがないとのことだったので「美味しい餃子の作り方」を書いてもらいました。想定読者は、家庭科でちょっと調理実習をしたことがあるレベルの中学生。食べ物を題材にしたのは料理が好きとのことからです。

上がってきた文章を見ると、とても分かりやすく書かれていました。「タネを作る」「包む」「焼く」というように段階でまとめて書かれていて、やるべきこともクリアです。本当に文章を書くのが苦手な人は、こういうものも要領を得ないごちゃごちゃした感じになってしまうのですが、この人はそうではありませんでした。

本人に「いいじゃないですか。仕事の報告書と何が違うんでしょうね?」と聞くと「好きなことなのですらすら書けました」と返ってきました。確かにそういう面もありますよね。「あと、何を書けば良いかはっきりしているので」とも。確かにこれはありそうです。

あとさらに良くするなら何を足すと良いと思いますか?と聞くと、その人が考えているうちに研修の他の参加者から「自分のと他のとの比較」という発言が出ました。これは良いポイントです。自分のレシピがちょっと普通と違うところを、なぜそうするのかの説明と合わせて入れると良さそうです。

あと、相手が初心者であることを考えると「こういうミスをしがちだから気をつけて」というのも入れてあげると役立つかも知れません。そして実はこのあたりに、良い報告書を書けるためのポイントが隠れています。

キャンプのオススメの方が難しい -論理思考でオススメ理由を考える

それからさらにもう一つ課題をやってもらいました。やはりその人が好きな「キャンプ」を、小学生の子どもたちがいて一緒にやるアクティビティを探しているお父さんに勧めることです。文章を書いている時間はなかったので、みんなでオススメの理由を出してもらいました。

すると特にその人は、こちらの方が難しい!と考え込んでいます。どこがオススメなのか自分で考えないとならないからです。そしてしばらくして、みんなのアイディアをまとめた結果、「自然をすごく感じられる」というのと「家族の会話がたくさんできる」というのが大きな理由として挙がってきました。

「なぜ?」の種明かしが文章の魅力を高める -論理思考実践

しかし、これで終わりではありません。僕から「ハイキングに行くよりも自然を感じられるってなぜ? どういう時に?」と聞きました。それと「どうして家族の会話が沢山できるの?」とも。ちょっとチコちゃんみたいですね。後者の方が出しやすくて「テレビとかないから」とかもありますが、考えるうちに「テント立てたり火を起こしたりご飯作ったり片付けたり全てが家族でやれるアクティビティで、そのために会話するから」と出て来ました。

もう一つの方がちょっと難しいですね。ハイキングとどんな時に違うのか? これは考えるだけでなくキャンプをやっていて「自然を感じるなあ」と思う瞬間を思い出してみる必要があります。例えば、、、夜、テントの中にいる時。布一枚隔てただけの向こうに虫の音や川のせせらぎが聞こえる時。ハイキングは夜歩かないしホテル泊の時は部屋の中にいて外もよく見えないのでそこまで自然は感じられません。

こうしてみると、ポイントは文章力ではないですね。まず「家族の会話が増えているのがいいな」とか「自然に触れている感じがする」と、気がつくこと。そして「なぜ家族の会話が増えるのかな?」「どうして自然に触れている感じが強いだろう?」と仕組みを考えること。

ギョウザの話の「どうしておいしくなるのか?」とか「どうしてよく『レシピ通りにやったのに失敗した』という人がいるんだろう?」と考えるのも同じです。

文章を書けるようにするには、とりわけ相手の知りたい「なぜ?」を解き明かすために考えることが不可欠で、これは報告書でも同じです。そして、これは、文章を書かなくとも練習できます。

(文責:モメンタム・デザイン代表、早稲田大学 グローバルエデュケーションセンター(GEC) リーダーシップ開発プログラム 副統括責任者 高橋俊之)