新年度ですね。僕が関わっているWonder Laboも26年度最初の授業がちょうど終わったところです。 新年度のWonder Laboは、AI時代を意識して、「人だからやれること」を伸ばしていきます。
人だからやれることとは
- やりたいこと/問いを見つける
- 鋭く、かつ建設的に考える
- 他の人とコラボする
やりたいことや問いがあれば、AIが強力な助っ人としてどんどん手伝ってくれますが、実は「やりたいこと」も「問い」もあまり持っていない人が少なくありません。質問に答えたり言われた通りに行動したりすることに慣れすぎているためでしょうか。
「考える」ことはAIもやってくれますが、こちらの意図から少しズレていたり、間違えることも多いので、それを見極めて指摘し、目的に則した答えを出してくれるように指示する力は不可欠です。
図や文章の作成はAIがやってくれるようになってきていますが、それを使って人を動かしたり、逆に人に自分の強みで協力するといった「コラボする」ことは人にしかできないことで、しかもなかなか難しいことです。
こういったことを、AIも適切に駆使しつつ伸ばして行きたいと思っています。
初日のワーク:自分を再定義する「二つ名」づくり
今日はその初回として「二つ名を作ろう!」という活動をやっていました。
「二つ名」とは、その人の特徴を端的に表したニックネーム。昔だと「越後の龍」(上杉謙信)、最近だと「走る哲学者(為末大 – 元陸上競技選手)」などがあります。また子どもたちは『スプラトゥーン』のようなゲームで、二つ名(=かっこいいニックネーム)をつけることになじみがあります。
元々は「自分の特徴からニックネームを作ろう」とだけ思っていたんですが、「二つ名づくり」というネーミングをWonder Laboの講師(僕は監修担当で講師はやっていません)が考えてくれました。生徒達に響く良いネーミングだなと思います(こういうことも大事なんです)。
二つ名作りに当たってはまず、自分の特徴を5つ出してもらいました。そして、その特徴に基づいて二つ名を作るのですが、ここはあえて生成AI(Gemini)を使い、生徒達にはAIに指示を出してもらいました。
「もっとこうして欲しい」といった修正指示をAIに各自で出し、最終的には一番気に入ったものを選びます。最後にその二つ名をクラスに対して発表・説明する、という流れです。
「自分センサー」の活性化が、「やりたいこと」を見つける第一歩になる
この「二つ名」づくりを初回に選んだのは、先に上げた「人だからやれること」の中の「やりたいことを見つける」と、「他の人とコラボする」を伸ばす第一歩という意味がありました。
まず、「やりたいことを見つける」こととのつながりについてです。 二つ名を出すためには、まず「自分の特徴」を出します。この「自分について探ってみる」ことが「やりたいこと」を見つける上で役立ちます。「自分はこういうものが好き」が「やりたいこと」につながりやすいのはもちろんのこと、「こういうことに強い(だからどんどんやりたい)」もありえます。
逆に苦手なことや嫌いなことですら、「それをなんとかする方法を考えたい」という「やりたいこと」になりえます。目のとても悪い人の方が「もっと見えるようにする方法があったら」と切実に思うのと同じです。
ところが人は、「自分ってどういう人なんだろう?」というのを意外と意識していません。他の人から見れば「すごい!」と思うようなことでも、自分にとっては当たり前過ぎて見過ごしていたりします。「こういうの好き!」という気持ちも、「やらなきゃいけないことがあるから無理」とか「周りに理解してくれる人がいない」とあきらめているうちに、忘れてしまったりするのです。
実際やってみると、「5つも思いつかない」「ダメなところしか思い浮かばない」という生徒も少なくありませんでした。「立った!」「歩いた!」「しゃべった!」とたくさん褒めてもらえる乳幼児期を過ぎると、よく指摘される「凹(欠点)」ばかりが気になってしまうのかもしれません。
そこで「好きなこととか、ちょっとしたこだわりも特徴になるよ」とヒントを出したところ、「レトロなものが好き」「夜更かししがち」といった個性が出て来ました。これから「自分センサー」を少しずつ活性化して、「あ、こういうことやりたいのかも?」と日常の中で気づけるようになってもらえたら、と思っています。
「中二病的」な響きが、斜めの関係の壁を溶かす
もう一つの「他の人とコラボする」は、二つ名をクラスに発表していたこととつながっています。
クラスのメンバーは昨年度から一緒だったのでお互いに顔見知りではあるのですが、小学校高学年〜高校生までと年齢の幅が広いことや、昨年度の活動内容から、一部の仲の良い子以外とはそれほど関わっておらず、お互いのことを深くは知りませんでした。
しかし今年度は、そこを積極的にやっていこうと考えています。その第一歩として、二つ名を発表しあうことでお互いを知るきっかけを作りました。ちょっとカッコイイ(中二病的にユーモラスな?笑)二つ名とその由来を楽しく聞きながら、お互いのことを少し知り、親しみを感じる。
実際、二つ名が発表されるたびに「おおー!」という声が上がり、いわゆる単なる自己紹介の時以上の注目が集まっていて、非常に良い空気が教室に流れていたように思います。
AIは思考のロールモデル。でも最後に「選ぶ」のは人間
ここで、「なぜ二つ名を考えさせずにAIに出させたのか?」という疑問もあるかもしれません。
確かに「クラスメートの二つ名を一緒に考える」というのも良いアクティビティですが、今回はあえてAIを使いました。一つには、AIがまさに「中二病的に(※ある生徒の表現)」思い切った表現を出して来るからです。子どもたちには、小さくまとまらずに思い切って表現して欲しい。AIがやってくるくらい。
またAIの強みとして、そこにある情報をフルに活用してアイデアを出してくるので、そこから発想を学べてしまったり、ある種の「目標」にできる面もあります。
例えば、ある生徒のためにGeminiが出して来た二つ名に**「ビクロイの数学者」**というのがありました。
※ビクロイ:人気ゲーム『フォートナイト』で100人の中から1位を勝ち取る最高の名誉「Victory Royale」の略。運だけでなく、高度な戦略と冷静な判断が求められます。
「算数が得意」「フォートナイトが得意」「メンタルは砲弾並みに硬い」といった特徴を瞬時に繋げて「ビクロイの数学者」と落とし込むのはなかなかの力です。その生徒もこの二つ名を一番気に入ったものとして、ニッコニコしながら紹介していました。
ちなみに僕のGeminiにこの二つ名について評価させたところ、次のように返ってきました。
単に「算数が得意なフォトナプレイヤー」では二つ名になりません。「数学者」という言葉が選ばれた背景には、おそらく以下のような「状態の定義」が含まれています。
「確率を支配している」感: フォートナイトというカオスなバトルロイヤルにおいて、運ではなく「必然」として勝利を引き寄せる。その「理詰め」な姿勢が数学者と形容された。
「美学」の存在: ただ勝つだけでなく、効率的で美しい勝ち方(建築の速さやエイムの正確さ)を追求している。
静かなる威圧感: 「砲弾並のメンタル」と合わさり、熱くならず淡々と相手を追い詰める様が、難解な数式を解く数学者の姿に重なった。
(中略)
「ビクロイ」という言葉を知っている世代の子どもたちからすれば、その二つ名は「圧倒的な実力者であり、かつ知性派である」という最大級のリスペクトが込められた名前だと言えますね。
同じAIなので自画自賛感もありますが笑、「確かに」という感じもします。またここまでAIができてしまうと、改めて「人間はこれから何をやっていくと良いのだろう」と考えてしまう面もあります。しかし、AIを使いながら「人間ならではの役割」を考えて行くこと自体に意味がある、と考えています。
そして一つ確かなのは、「この二つ名が一番いい」と、最後に自分の心に響くものを選ぶのは「人」だということです。「ビクロイの数学者」の二つ名を選んだ生徒は確かにメンタルが強そうなのですが元気いっぱいタイプで、冷静沈着なタイプではありません。でももしかすると、そう「なりたい」という面もあってこの二つ名を選んだのかもしれません。
このように始まったWonder Labo 2026年度。 次回は今期最初の作品課題「学校の不思議」の取り組みを始める予定です。
学校生活の中で感じる「これ、変じゃない?」という違和感を、批判だけで終わらせず、どうやって建設的な「発明」や「笑い」に昇華させていくのか。不満をクリエイティブに変える生徒たちとの挑戦を、僕も楽しみにしています。
モメンタム・デザイン代表 高橋俊之(たかはし としゆき)