冒険する組織

目指すは冒険する町内会?

4月上旬に開かれた総会を経て、正式に町内会長(うちでは自治会長)になりました。新年度&新任ということで、あれこれ次々とやってきて目を白黒させてますが、少しずつこれからに向けて動き始めています。

就任にあたって、以前の投稿では「優しい」をキーワードにしたいと書きました。でも最近になって、もうちょっとワクワクする表現にもしてみたくなってきました。そこでちょうど話題になっている「冒険する組織」が頭に浮かび「それ、町内会でもできたら面白くない?」と思い始めています。

もちろん、町内会の資金でハイリスクな投資を始めるとか、秘境に探検に行くとかじゃありません(笑)。自然が身近な地域ではあるので、探検も案外できなくはないんですが。

「冒険する組織」ってなんだ?

「冒険する組織」は、株式会社MIMIGURI代表の安斎勇樹さんが提唱している考え方で、「一人ひとりのメンバーが好奇心や関心にもとづいて自己実現を探究しつつ、チームとしての社会的ミッションも追いかける組織」です(『冒険する組織のつくりかた』安斎勇樹, 2025)。

こう聞くと、「いやいや、会社ならまだしも、町内会で自己実現って大げさじゃない?」って声も聞こえてきそうです。でも、冒険する組織の背景にある「冒険的世界観」、そしてその対照にある「軍事的世界観」を考慮に入れると、「冒険する町内会」は意外とこれからの町内会や地域のつながりのあり方じゃないか、とも思えるのです。

「軍事的世界観」と「冒険的世界観」

上に書いたようにこの「冒険する組織」のベースには、「冒険的世界観」と「軍事的世界観」っていう、対照的な2つの見方があります。

軍事的世界観では、組織や体制が主役です。物事は上からの命令で動き、メンバーは例外なく従うことが求められます。「やるべきこと」が優先されて、「やりたいこと」は後回し。昔ながらの企業や学校は少なからずこういう世界観で運営されているのではないでしょうか。

これを町内会に当てはめるとたとえば──

  • 役員が輪番で回ってきた。介護や自分の体調が気になるけど、「みんなやってるから」と言われて断れない。
  • 昔からやっているお祭り。参加者も減ってきてるのに、「続けること」が目的になっていて、真夏に班長たちが炎天下に駆り出される。
  • ゴミ捨てルールを守らない人がいるので、「名前入りゴミ袋の使用を義務づけようか」という議論になっている。

規律が重視され例外は認められず、しんどくても逃げられない。秩序の維持は強制力でおこなわれるわけです。もちろん、軍事的世界観がすべて悪いわけではありません。局面によっては必要なこともありますし効率的な面もあります。でも、全体の方向性としては息苦しいし、これからの社会には次に述べる冒険的世界観の方が合うのではないかと僕は考えています。

冒険的世界観ってどんな感じ?

一方で、冒険的世界観では、「人」が主役。しかも一人勝ちじゃなくて、それぞれが自分らしくいきいきと動ける社会を目指します。

物事は上からの命令ではなくて、メンバーの意思や協力によって動いていく。「やりたいこと」が大手を振って探究できるような世界観です。

もちろん、自由にやるだけじゃうまくいかないこともあります。ちゃんと食べていくには工夫も努力も必要ですし、ルールも完全に無視するんじゃなくて、みんなで話し合ってじわじわ調整していく。その分、手間はかかるけど、納得感や相互理解は高まります。未知の世界に飛び込むことにワクワクし、予想外のことが起きても「あちゃーそう来たか!」と言いあいつつ「じゃあ、どうする?」と考えるのをみんなで楽しんでしまいます。

で、冒険的な町内会ってどんな姿かというと──

  • お祭りは有志が中心になって、伝統の大事な部分は残しつつも新しいアイデアの取り込みに挑戦。それを中高生も含めた若者たちがリードして、失敗もあるけど笑い転げつつ乗り越え、世代を超えて仲も深めている。
  • 防災への関心が低いことに問題意識を持った人たちが防災教育をエンタメ性の高いイベントに。子どもたちがMCを務めているので、その晴れ姿を見たくて祖父母たちも来て、実は防災意識も高まってしまう。
  • 「町内会って楽しい」とか「友だちづくりにいい」との口コミが広まって、役員やってみたいという人が増えてくる。トラブルが起きても犯人探しじゃなくて、根本的な解決に向けた探究が自然におこなわれる。

──って感じでしょうか。こんな町に住んでたら、道は駅まで最短時間で通り過ぎたいものではなく、誰かとすれ違うのが楽しみなものになるかも?

最初の一手は?

そんな妄想をしつつ、先日、交代して最初のミーティングがやってきました。「冒険する町内会」への第一歩はどうすると良いのか、ちょっと考えてやってみたことがあるのですが、それについてはまた次回。

モメンタム・デザイン代表 高橋俊之(たかはし としゆき)

冒険する組織のつくりかたの最新記事4件