アイスブレイクへの唐突感をなくす

前の記事で「冒険する町内会」に向かうためにアイスブレイク「嘘つき自己紹介」をやった話をしました。早めに打ち解けておきたいけどビジネス界では定番の飲み会のハードルが高いので、30分程度のアイスブレイクから入ったわけです。

でも、アイスブレイクですらいきなりぽんと出してはハードル高いかもな、というか、みなさんにとっては唐突感がありそうな気がしていました。飲み会なら好き嫌いはともかく経験はありそうですが、アイスブレイクなんて40代以上の人はやったことない人も多そう。ましてこういう会合でやるなんてイメージつかない可能性がありますよね。なので、自然に入っていける空気とか流れを作る必要がありそうだと思っていました。


140文字の布石

そのための一つ目の策が、事前案内です。定例会の一週間ほど前にリマインドを兼ねてアジェンダの案内を関係者に配付するのですが、その最後に下のような文を入れました。

定例会の後、少しだけ懇談タイム(ゆるく自己紹介)を持ちたいと思っています(30分程度)。楽しくできる工夫を少し考えてみました。よろしければぜひご参加ください。
みなさまお忙しい中、貴重な週末の時間と思います。有意義に、かつ楽しく運営していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

アイスブレイクとか耳慣れない言葉は使わず、「懇談タイム(ゆるく自己紹介)」とすることで、なんとなくイメージは浮かび、「苦痛ではなさそうだしどんな人がいるか分かっておくのも良さそうだな」と思ってもらえたらいいなと考えていました。また「工夫を少し考えてみた」と入れることで「単なる自己紹介よりちょっと楽しいのかも?」と思ってもらえたらラッキーだなとも。そして「30分」と時間を書くことで、帰宅予定時間を家族にも事前に伝えられるようにして、同時に「このくらいなら参加できそう」と思ってもらおうとしていました。

最後の「お忙しい中、貴重な週末の時間…」という部分はアイスブレイクだけでなくミーティング全体を指していて、「有意義にかつ楽しくしたいんだな」という印象が、みなさんが町内会館のドアを開けて入ってくる時も残っていると良いなあと思っていました。


会場レイアウトの試行錯誤も「冒険」?

次に考えたのはテーブルのレイアウトです。これまでの会合では教室形式を取っていたよう。前に役員席があり、それに向き合う形で他の人たちの座る席が数列ある形です。ただこの形式は役員側から全員の顔が見やすいものの、それ以外の人たちからは役員以外の顔が見えにくくなります。また役員達が主導する人たちで他の人たちは従う人たちという印象を与えやすいのも気になります。

そこで、ロの字に変えることにしました。みんなが全員の顔を見ながら話ができて、対等な感じにも近づきます。町内会館の広さ上、入りきらないという問題に最初ぶつかったのですが、総務担当役員と机と椅子を並べてみつつなんとかやりくりして、一部だけ二列にすることで解決しました。

ただこの形式にも欠点があります。真ん中に大きな空間ができる分、発言しようと思うとそこそこの大きさの声を出さないとならず、発言慣れしていない人にはちょっとハードルが高くなりやすいことです。しかしそれは今後また工夫していけば良いかなと思っていました。毎度いろいろ変わっていくこと自体が「冒険」的でもあって良いかなと。


「楽しいものに」を印象づけたい!

当日が来て、第一回の会合が始まりました。役員さんたちとはこれまでに2回話をしていますが、班長さんや各種委員の人たちとはほぼ「はじめまして」です。最初に良い空気感を作ることが大事だなと思ったので、「こんなふうにやっていきたい」という話を冒頭に少しだけさせてもらいました。

まずは事前案内にも書いた運営についての話です。

お忙しい中、貴重な週末の時間にありがとうございます。有意義にかつ楽しく運営していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします

町内会について「楽しい」という言葉はあまり聞かないと思うので、「そうなんだ!」と冒頭で印象づけられたらなと思っていました。また「効率が悪いんだろうなあ」と思っている人がいたら「有意義に」のところに好感を持ってくれたらと思っていました。

続いて町内会の方向性についての話を少しだけ。

町内会との関わり方や町内会に求めるものも多様になっていると思います。忙しくて関われないこともあり最小限の機能さえあれば十分という人もいれば、いろいろなつながりを必要としている人もいると思います。それぞれのやり方で関われる町内会にしていければと思っています

最小限派とつながり必要派が相容れず険悪になってしまうのではなく、どちらか一方に画一的になることを強制されるのでもない、難しいけど多様性に応える町内会を目指して行きたいと最初にお伝えしたかったのでした。


狙い通り自然な流れに。でもまだ課題も。

この後、みなさんに軽く自己紹介していただいて(ここは嘘はなし笑)から、報告・連絡や討議に入っていったのですが、そこまでの布石もある程度功を奏したのか、なごやかな雰囲気で会合は進んで行きました。そのあとの嘘つき自己紹介にも役員さん全員が残ってくれて、良い雰囲気でおこなえたことは前の記事の通りです。自然な流れになりました。

ただ、課題がないわけではありません。お祭りについてどう思うかという議題になった時のことです。お祭りは夏の炎天下に2日間かけて隣の町内会と合同でおこない、神輿が町内を練り歩きます。しかし町内からの参加者はあまり多くない一方で役員さんや班長さんは仕事が多くてきつく、隣の町内との温度差はかなりあるようです。こちらがやらないと隣だけでは続けられないのでこれまではやってきているのですが、どこまで続けられるのだろうかと副会長(前の会長)は言っていました。

そこでこれから隣の町内会と話す前に、みなさんの思っているところを出しておいてもらいたいと考えていたのでした。

ところが、意見が出ないのです。やりたいとも、やりたくないとも。これに対して副会長(前会長)が言っていたことは印象的でした。

前期からやっていて思うんですけど、みなさんの本音がわからないんですよね。やることに決まったらちゃんとやってくれてやりたくないとは言わない。やりたいとも言わない。本音のところどうなんだろうと


さて、ここからどこへ向かうのか。その話はまた次回以降に。

モメンタム・デザイン代表 高橋俊之(たかはし としゆき)

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