前ポストで町内会について「会長を引き受けてもいいですよ、と開会早々に話した」と書きましたが、正確には「三つのことにみなさんから賛同いただけるなら会長を引き受けても良いかなと思っています」と言いました。
それは、このタイミングで話しておくかどうかで今後がスムーズに行くかどうか大きく変わりうると思っていたことでした。
一つ目は、「みんなで協力してやっていく」ということでした。僕は人も全然知らないし、お祭りのことも分かりません。仕事量的にも一人とか一部の人たちだけではとても無理です。だから、協力してやっていくことが不可欠です。どうでしょう? という一つ目の問いかけに対しては、積極的な人からは大きなうなずきを、かなり役員に消極的な人からも、そこそこのうなずきを得られました。
二つ目は、「無理なことはやらない」ということでした。これは、「これまでやってきたんだからやらないわけにはいかない」とかで、たとえば夏の炎天下のお祭りを無理矢理続けるようなことはやめよう、という意図がありました。
これについても全員からすぐ賛同が得られました。今期の役員に反対する人はいないだろうと前回の様子から予想していましたが、具体的にたとえばお祭りを前にすると「うちの町内だけやらないわけにいかない」といった意見が役員内外から出る可能性もあります。その時に「最初にこう言っていたよね」と出せるのは意味があると考えていました。
もっとも、ただなんでもやめてしまうということではなく、大事なことは守りたいがその本質とやり方をちゃんと考えましょう、という意味です。
三つ目は、「優しい町、優しい役員会にしたい」ということでした。役員の中でも「みんなやっているんだから」とか押しつけない、物事を決める時にも、高齢者や忙しい人やいろいろな人の事情に優しいことを意識しましょう、と言いたかったのです。これは最後の一つということもあってか、前の二つに比べると「どういうことだろう?」とみなさん考える雰囲気がありましたが、それでもまもなく賛同を得られました。
以上三つ、わかりやすくするために「条件」のような言い方をしましたが、ここで意識していたのはリーダーシップにおける「目標設定・共有」でした。ただ「仕方がないから最低限のことをやる」とか「なんとか無事に二年間を過ごす」といったスタンスではなく、「こういう方向に向かおう」「こういう価値観を守ろう」と前向きに行きたいと思っていました。
それは、やりすごすやり方よりも大変になる面もありますが、「なんかそれいいんじゃない?」とメンバーに感じられていれば、むしろみんな積極的になる可能性があります。また、組織の向かう方向・指針で合意できていれば、意見が分かれるところでも建設的な議論がしやすくなります。
実際、その後の、役を決めていく中で、前回以上に「協力しよう」という空気感が増したように感じられました。会長の次に大変と言われる総務職にも「私やってもいいですよ」と申し出があったことをはじめとして、積極的に関わろうという発言がけっこう見られました。ちょっと流れが止まると半分冗談で前会長から「さっき、協力してやりましょうって言ってましたねー」との呼びかけがあり、また「じゃ、わたしは…」という人が出て来ました。
また、そうやっていろいろな役がどんどん埋まって行く中、出遅れたのか、どれもやれないと思ったのか、「この役をやりませんか?」と言われても、ただただ「私無理です」と拒否する人もいて「みんなやっているんだから」とたしなめる人もいたのですが、「優しく行きましょう。何か策を考えましょう」と検討することができました。そう考えていると案が出て来るもので、その人でも引き受けられるという役に最終的に決まりました。
モメンタム・デザイン代表 高橋俊之(たかはし としゆき)